ー訪問入浴介護の浴槽機材をわかりやすく解説！安全で快適な入浴のしくみー

 

訪問入浴介護の浴槽機材とは？基本をやさしく解説

訪問入浴介護の浴槽機材とは、自宅のベッド横や居室内に設置して、その場でお湯をためて入浴できるようにする専用の道具一式のことです。折りたためる簡易浴槽、本体を支えるフレーム、給湯や排水のホース類、体を支えるマットやベルトなどがセットになっています。
普段の家庭用お風呂とは形も使い方も異なるため、「本当に家の中で安全にお風呂に入れるのだろうか」と不安になる方もいますが、訪問入浴介護の浴槽機材は医療や介護の現場で培われたノウハウをもとに設計されており、安全面に配慮された仕組みになっています。

浴槽機材は持ち運びを前提に作られているため、軽量で組み立てしやすい一方、入浴中はご本人の体をしっかり支えられる強度も確保されています。介護職員や看護職員が短時間で設置と片付けを行えるよう、部品の形状や接続方法にも工夫が詰まっています。

訪問入浴介護で使われる浴槽機材の主な種類

訪問入浴介護の浴槽機材と一口にいっても、その内容は一つではありません。ここでは代表的な機材の種類を分けて紹介します。これを知っておくと、事業所からの説明もイメージしやすくなります。

折りたたみ式の簡易浴槽

訪問入浴介護と聞いて多くの方が思い浮かべるのが、ビニールや樹脂でできた簡易浴槽です。空気でふくらませるタイプや、折りたたみ式フレームにビニールシートをかぶせるタイプなどがあります。
どのタイプにも共通するポイントは、室内の限られたスペースに設置しやすいこと、使用後に水を抜きコンパクトに片付けられること、縁がやわらかく体をぶつけてもケガをしにくいことです。ご本人の体格やベッドの高さ、部屋の広さに合わせて、事業所が最適な浴槽機材を選びます。

ストレッチャーや入浴用担架

寝たきりの方や、座っている姿勢を保つのが難しい方の訪問入浴介護では、ストレッチャーや入浴用担架が活躍します。これは、ベッドから移乗し、そのまま浴槽の上に移動させて入浴するための機材です。
高さ調整ができるタイプが多く、介護職員の腰への負担を軽くしながら、安全に移乗できるようになっています。ベルトやサイドガードが付いているタイプもあり、入浴中に体がずれたり滑ったりしないよう配慮されています。

給湯機・ポンプ・ホース類

訪問入浴介護の浴槽機材には、お湯をためたり排水したりするための機器も含まれます。給湯機やポンプを入浴車からホースでつなぎ、室内の浴槽にお湯を送ります。
役割は、適切な温度のお湯を送り続けること、使用後のお湯を素早く排水すること、ホース接続部からの水漏れを防ぐことなどです。専門スタッフが取り扱うため、利用者側が操作方法を覚える必要はありませんが、「どこからお湯が来て、どこに流れていくのか」を知っておくと安心感が高まります。

浴槽機材に搭載されている安全機能

訪問入浴介護では、高齢の方や持病のある方が入浴するケースが多いため、安全性が非常に重視されています。浴槽機材にも、さまざまな安全機能が備わっています。

すべりにくい床面とやわらかい縁

簡易浴槽の内側の床面は、すべりにくい素材や凹凸のある加工がされていることが多いです。これにより、足を動かしたときに滑りにくくなり、姿勢を保ちやすくなります。
また、浴槽の縁はやわらかい素材でクッション性があり、万が一体をぶつけてもケガをしにくいようになっています。ベッドからの移乗や体位変換の際も、このクッション性が安全性を高めてくれます。

温度管理と見守りのしやすさ

給湯機には温度調整機能があり、必要以上に熱いお湯が出ないよう設定されています。看護職員や介護職員が実際に手でお湯の温度を確かめながら調整するため、やけどのリスクを減らすことができます。
さらに、浴槽機材はご本人の表情や体の様子が見やすい高さや形状に設計されています。職員が声かけをしながら入浴を進め、顔色や反応の変化にすぐ気づけるようになっている点も、安心できるポイントです。

浴槽機材が置けるスペースと環境づくり

訪問入浴介護を利用するにあたり、「うちの部屋の広さで浴槽機材が置けるのか」が気になる方も多いです。ここからは、スペースや環境づくりのポイントを紹介します。

設置に必要なおおまかなスペース

訪問入浴介護の浴槽機材は、一般的なベッド横や六畳程度の居室にも置けるように設計されています。ただし、浴槽自体の大きさに加え、スタッフが周りを動き回るためのスペースも必要です。
事前訪問の際に、事業所スタッフが実際に測りながら、「この位置なら安全に設置できます」「ここにある家具を少し動かしておきましょう」など、具体的な提案をしてくれます。必要に応じて、キャスター付きの家具に変えるなど、日常生活にも役立つ工夫を検討してみても良いでしょう。

床や電源などの確認ポイント

浴槽機材を使うときは、水と電気を安全に扱うことが大切です。床材が滑りやすい場合はマットを敷く、電源タップの位置が遠い場合は延長コードの取り回しに注意するなどの配慮が必要になります。
訪問入浴介護のスタッフはこうした点も踏まえて準備を進めてくれますが、ご家族としても「水がこぼれても大丈夫なようにタオルを用意しておく」「ホースやコードを踏まないように動線を確保する」といった意識を持っておくと、より安全性が高まります。

訪問入浴介護の浴槽機材に関するよくある疑問

最後に、訪問入浴介護の浴槽機材について、利用者やご家族からよく聞かれる疑問を整理しておきます。

浴槽機材は自分で購入する必要があるのか

基本的には、訪問入浴介護の浴槽機材は事業所が用意し、訪問のたびに持ち込んでくれます。利用者側が浴槽機材を購入したり、保管したりする必要はありません。
ただし、シャワーチェアや滑り止めマットなど、日常の入浴や他の介護場面でも使える用具は、ご家庭でレンタルや購入を検討することもあります。どこまでを事業所が用意してくれるのかは、契約前の説明で確認しておくと安心です。

浴槽機材の衛生面は大丈夫なのか

訪問入浴介護の浴槽機材は、多くの利用者の自宅で使われるため、衛生面を気にされる方も少なくありません。事業所では、使用後に洗浄や消毒を行い、次の利用までに乾燥させるといった管理を徹底しています。
また、直接肌に触れるシートやマットなどは、交換しやすい構造になっているものや、使い捨てのカバーを併用する場合もあります。気になる場合は「浴槽機材の消毒方法や管理方法を教えてください」と遠慮なく質問してみてください。

訪問入浴介護の浴槽機材は、一見すると専門的で難しそうに思えるかもしれませんが、基本的な仕組みや種類、安全機能を知っておくだけでも安心感は大きく変わります。どのようにお湯がためられ、どんな機材で体を支えているのかを理解しておくと、初めての利用でも落ち着いてスタッフに任せやすくなります。気になることがあれば一人で抱え込まず、ケアマネジャーや事業所の担当者に相談しながら、納得して訪問入浴介護を活用していきましょう。