訪問入浴とは、高齢者や障がい者などの方が自宅や施設で入浴を行う際に、専門の介護スタッフが訪問して入浴の援助を行うサービスのことです。
高齢者や障がい者の方にとって、入浴は日常生活の中で大切な行為。また、入浴することで体の清潔な状態を保つだけでなく、気分転換にもなります。
しかし、加齢による衰えや障がいの場所によっては、自力で入浴することが難しい場合も珍しくありません。そのような場合、専門の介護スタッフが訪問して安全かつ快適な入浴を支援することで、身体の清潔を保ち、健康維持につなげるのが訪問入浴の大きな目的です。
また介護スタッフが訪問して入浴の援助を行うことは、家族や介護者の負担を軽減することにもつながります。
しかし、訪問入浴は単にお風呂に入る手伝いをするというだけではありません。また高齢者や障がい者の方にとっては、思わぬ危険もひそんでいるもの。ちょっとした油断や、不注意が大きな危険に直結することもあります。
そこで今回は訪問入浴での注意点について解説します。
訪問入浴の入浴前の注意点
訪問入浴の注意点といえば、実際の入浴中のことばかり考えがちです。しかし、訪問入浴では、入浴する前にいくつか確認しておくべき事項があります。
最初に必要になるのが入浴の希望時間です。まずは入浴の希望時間をしっかり確認しておきましょう。そうすることで、入浴のための準備がスムーズに進められます。
次に注意すべきは、入浴する人の身体の状態です。高齢者や障がい者の方が入浴する際には、身体の状態をしっかり確認することが必要となります。
訪問入浴では、時間内に入浴を終わらせなければならないと急ぎがちになってしまうこともありますが、入浴するときは体の状態を確認するチャンスです。身体に怪我や湿疹などがないか、洋服を脱いだときに確認しておきます。
また、注意点として夏場に限らず水分の補給も忘れないようにしましょう。高齢者や障がい者の場合、十分に水分補給を行ったかどうか、確認するのが難しいケースもあります。
しかし、水分補給を怠った場合、体調が悪化するケースも少なくありません。普段の介護を行っている人に話を聞くのはもちろん、訪問入浴サービスを行う介護者もしっかり水分補給をしているかどうかを確認しましょう。
さらに入浴中の危険を回避する意味でも、体温や血圧が正常範囲内にあるかどうか、熱がないか、入浴に適した状態かどうかなどにもしっかりと注意を払いましょう。
入浴の前には、お風呂の状態にも注意をしておきましょう。特にお風呂の水量や温度、湯船の深さや広さ、転倒防止のための手すりの有無など、お風呂の状態を確認することが大切です。
特に初めて訪問入浴を行う場合、勝手がわからないと危険につながることもあるので、十分に注意します。
実際に入浴する前には、用具の確認も怠らないようにしましょう。身体を洗うためのタオルやスポンジ、シャンプーやボディソープ、洗面器やコップ、必要な用具を揃えることが大切です。
使えると思っていたものが使えなかった、シャンプーなどが切れていたということもあるので、注意点としてあらかじめ確認しておきます。
入浴中の注意点
訪問入浴で事故が起きやすいのは、やはり入浴中です。そのため入浴中はさまざまな点に注意する必要があります。では、入浴中にはどのような注意点があるのでしょうか。
身体の安定性を確保する
入浴時には、高齢者や障碍者の身体が安定していることが重要です。体が濡れていると滑りやすく、またとっさの場合でも介助する人が助けるのが難しいこともあります。
まず確かめておきたいのが入浴場所の手すりや滑り止めのマット。手すりやマットを設置することで、転倒や滑り落ちなどの事故を防止することができます。また、入浴時には必ず介助者が付き添い、身体の安定性を確保することが大切です。
水温や水圧を調整する
高齢者や障がい者の方は、皮膚や体温の調節機能が弱くなっていることもあります。そのため水の温度が高いとやけどを起こしたり、水圧が高いと体に負担がかかることがあります。
特に、それが自覚できない、感じることができないという場合、それが原因で重大な問題を引き起こしてしまうことにもなりまねません。そういった危険を防止するためにも入浴前には、水温や水圧を調整し、快適な状態に調整することが必要です。
特に、認知症などの方は、水温や水圧の調整ができないため、サービスを行う介助者がしっかり注意することが重要となります。
緊急時の対応を確認する
入浴中に体調が悪化した場合や、何らかの事故が起こった場合には、迅速な対応が求められます。そのため、介助者は、緊急時の対応方法を事前に確認しておきます。
必要な機器や医療機関などの情報を常に把握しておくことが大切です。また、なによりも重要なのが「ミスが起こる」という前提で行動すること。
人間はミスをしないといった過信や、ミスができないという職場のストレスがあると逆にミスが頻発してしまいます。
事前に、あらゆる事態が起きる可能性を考えておきましょう。
体位の変換を行う
入浴中は、座位や仰向けなどの体位を変えることが必要です。というのも長時間同じ姿勢でいると、身体に負担がかかり、圧迫や潰瘍などのトラブルが起こることも。
また、高齢者や障がい者はそれを感じられるとは限りません。そのため介助者の注意点として、適宜体位の変換を行い、血行を促進し、身体の負担を軽減することが必要です。
まとめ
訪問入浴はしっかりコミュニケーションを図ることが重要。
訪問入浴は注意点も多くついつい緊張してしまうもの。安全に入浴させることを気遣うあまり、流れ作業になってしまうこともあります。
しかし、そのようなときでも重要なのは高齢者や障がい者とのコミュニケーション。
しっかりコミュニケーションを取ることで信頼関係を築き、よりスムーズな訪問入浴につながるでしょう。